彼女が毎年パリに行く理由
以前、陶芸が趣味の女性に聞いた話です。彼女は毎年夏休みになるとパリへ旅行に行きます。理由は一年間創作した作品の展示。本業は金融関係者なので完全に趣味の世界ですね。しかし何が嬉しくてわざわざ真夏の一番旅費が高いシーズンに行くのでしょうか?もちろん窯元の先生がその時期を選んで展示会を行うのであればそれに従っているのでしょうが毎年のイベントなので興味が湧いて少しインタビューしてみました。
夏休みのシャンゼリゼ通り
すると面白いことがわかってきました。なんとそのシーズンのパリは世界から人が集まっているようで世界中の人と会えるそうです。でもそれでは彼女もただの日本人旅行客です。なにが他の旅行客と違っているのでしょう?それは会期の間にある休日。彼女は毎年その時期のシャンゼリゼ通りに繰り出していたのです。
パリの和服美人
シャンゼリゼ通りは歌にも出てくるしロケ地としても有名な場所です。世界中の人が凱旋門からシャンゼリゼ通りを歩くのはテレビでもよく見る風景ですよね。彼女はそのシャンゼリゼ通りを真夏に浴衣を着て日傘をさして歩くのだそうです。
世界の目は?
するとあちこちから「美しい」「どこのマドモアゼルだ?」と言う声が聞こえてくるというのです。そしてそこかしこで撮影会が始まるのです。世界中から集まった人たちはこの機を逃したら二度と浴衣美人と写真になんて収れないかもしれないという「今ここだけ感」に押されて次々と撮影を申し込みます。その結果、世界中から届いた写真も一枚や二枚ではなく数十枚になったと微笑んでいました。
EU圏の人たちは
私の経験上、EU圏の人々本物を好みます。逆に言えば偽物には見向きもしません。(なのになぜあんなにパリの寿司屋は偽物が多いのでしょう?笑)ゆえに本物の日本人が本物の浴衣と日傘で歩いていたらそれは好奇な目でみると同時に見慣れない美しさに目を奪われてしまうのももっともな話です。しかも滞在理由は日本の瀬戸物(芸術としての)創作品を展示のためにパリを訪れているとなればなおさらのこと。写真の一枚くらいは欲しいと思うのは頷ける話です。
薄れゆく着物の価値
日本では今、タンスの肥やしになってしまった和服が多く捨てられようとしています。中にはリサイクルを行い再び日の目をみるものもありますが本当にごく一部の着物でしかありません。大阪の四天王寺の骨董市などは着物がたくさん出されています。ああいった機会はどんどん地方では減ってきています。
アンティークに価値を見出せない日本人
ああいったものを海外へ出してみることも面白いと思います。チャイナドレスが世界でも有数のファッションになったように着物も世界的なファッションとして十分通用する魅力と可能性を秘めていると思います。パリに限らずブロードウェイやロンドン、ベルリンなど世界的に着物ファッションの女性が街を闊歩してくれるのを夢見ているのは私だけではないと思います。