ふるさとRe:Boot研究所

本当のふるさとを愛するために今私たちの出来ること

お伊勢講に学ぶまちおこし

約4分

旅をしなかった日本人

かつて日本人はほぼ地元から移動すること無く生活をしていました。もちろん生産品を販売したり、実家や親戚間の訪問等もあったりある程度の距離を移動することがあってもおおむね「ふるさと」かその近辺で生活していました。

公式に長距離を旅するイベント

そんな中で長距離の旅を行う奇跡的な全国規模のイベントがありました。それが「お伊勢講」よ呼ばれるものです。日本全国津々浦々から三重県の伊勢神宮を目指して旅をすると言う一大イベントです。かかるお金も多く、一生一度は言ってみたいとさえされた大きな旅行であったと言えるでしょう。

伊勢の観光誘致に成功した立役者

そんな伊勢へのお参りを激増させたのには理由がありました。それは伊勢ならではのアイディアと戦略があったのです。伊勢には「御師」と言われる現代の営業マンがいて全国を行脚します。その際に伊勢神宮の暦とお札を各地域で配り「これはご利益のあるとても貴重なお札です。必ず家内安全、病気平癒、商売繁盛いたします」と言って無料で配ったのです。

お札と暦のお返しに初穂料の奉納があったので御師はそこで伊勢のお土産を手渡していました。若布とか昆布とか干物や干あわびとかです。今でも神社の初詣で正式参拝を申し込むと暦とお札と少しの食べ物をもらえることがありますがこの「御師」の習慣だったのですね。

数年単位の営業活動

一年後再び「御師」はそのエリアを尋ねます。暦を手渡すとき「来年のこの頃にまた伺いますね。」と暦に印を付けてから旅立ったので、旅をしない日本人は御師の来訪を楽しみにしています。到着と同時に「一年間いかがでしたか?お元気でしたか?」と御師は尋ねます。するとそのエリアから必ず何人か「病気が治りました!!」「家が火事から守られました!!」と出て来る人がいました。お札のお礼にとお金や食べ物を御師に手渡します。すると「天照大神のご加護が届いてなによりです」と答えて「ぜひ伊勢まで来て天照大神のご加護に預かって下さい。私とその家族が必ずお世話致しますよ」と言った。

お伊勢講が起こる仕組み

かくしてそのエリアでは「お伊勢講」が起こり近隣住民からお金を集めてその地区で「お伊勢参り」を目標に積立金を始めます。次々と近隣住民も積み立てを行い、代表が「お伊勢講」の全員とその家族の名前を書いて伊勢に馳せ参じたわけです。だれが伊勢まで行くのかはくじ引き等で決めていて、それに当たるのも今で言う宝くじ感覚で多いに盛り上がったようです。

結果として

御師を使った営業活動は大成功し、次々と参拝者が集まることとなりました。そして伊勢のエリアの御師とその家族、親戚は伊勢神宮の周りで宿屋や飯屋、土産物等を売ったり経営したりして伊勢周辺は多いに賑わったと言います。

計画的な運営が行われていた伊勢

参考までに言うと伊勢神宮の遷宮が数年前にありましたがあの歴史的イベントも一年限りと言うわけではありませんでした。最後のメインイベントが伊勢神宮の内宮外宮の遷宮であって、そこに至るまでは周辺の小さな末社から一つずつ20年かけて毎年遷宮遷座と称するお社の立て替えを持って一連の祭りとしていたのです。これには大きな意味がありました。と言うのも宮大工と言われる職業の方達は一度お社が立ち上がってしまうと修繕くらいしか仕事はありません。あちこちのお社を片っ端から修繕してもその仕事には限度がありました。ところが伊勢はその仕事を平均化して数十年単位で計画的に仕事を与えていたのです。結果的に一年の事業計画的な予算の割振りや生計を立てる見込みも予測しやすく周辺住民の生活を安定させて守ることが出来たのです。

現代にも通じるまちおこしと行政の運営

この発想は今のまちおこしにもそのまま活用出来る思考だと思いませんか?今この瞬間だけ大きくなればいい、今だけ稼げればいいと言うのではなくそのエリアの継続的な成長と安定的な運営を視野に入れたまちおこしが必要な時代に入って来ていると思います。そのために必要な人材を配置し循環的なまちおこしの必要性が問われている時代になったと言えるでしょう。

About The Author

代表katoP
katoP(Pはプロデューサーの略)
神奈川県生まれ。
神奈川の県央部の高校を卒業し東京にて大学を卒業。
20世紀を不動産業と金融機関交渉代行を仕事として過ごす。
(主に賃貸と都市銀行との交渉)
21世紀に入り町おこしのプロデューサーを始め、独自メディアの編纂やコストを減らした広報手段等をアドバイスしてきた。
創刊した広報誌の編集長は軒並み2年以内に各都道府県の知事と対談しTVに出演、中には世界規模の活動に成長した組織もある。
このたびその活動を元に日本中で行われる町おこしの実体と検証、また主に学生たちの町おこし活動をまとめ、各地の町おこしの参考実例集を作るべく「ふるさとRe:Boot研究所」を立ち上げた。
各メディア記事と実例を元に、独自の視点でのイノベーションを提案するスタイルにファンも増加中!!

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